なんでわざわざ濃度を炭酸カルシウム換算しなければならないの?




炭酸カルシウム換算は水処理に携わっている人であれば当たり前に使っている単位です。

でも、この考え方ってなぜ使われるのでしょうか?

学校では「SI単位系を標準的に使いなさい」と言われて育ってきた世代であれば、摩訶不思議なこの単位が意味するところが理解できないという人も多いかもしれません。

もしかしたら多くの人がこの単位を使うことに意味があるのか?とっいった疑問を持っているかもしれません。

ということで、今回は水処理で使う濃度の単位である炭酸カルシウム換算について、それが何を意味して、どうやって計算されるのかまとめてみました。

水処理での濃度の表し方

水処理で濃度を表すときによく使うのが1L当たりにどれだけの

物質が含まれているかをmgで表す単位です。単位的には「mg/L」と表記されます。

「L」はよく数字の「1」と勘違いされやすいため、小文字の「l」

ではなく、大文字の「L」を用いて表記されることが多いです。

これは別称「ppm」(parts per millionの略)と呼ばれて、100万分の

いくらを示す単位としても用いられています。

濃度が低くなるとmg/Lでは表記しきれなくなるため、

さらにその千分の一の単位である「μg/L」=「ppb」を用います。

さらにその千分の一の単位は「ng/L」=「ppt」、

さらにその千分の一の単位は「pg/L」=「ppq」

といった具合にmg/Lを起点に千分の一ごとに単位が変わってきます。

水処理で用いられる範囲では「ppq」くらいが限度だと思います。

濃度といえば、学校で習った単位として物質量「mol」の概念がありますが、

水処理の実務ではあまり用いられません。

これは推測なのですが、、、

水処理の濃度計算は薬品を溶かしたりして試薬を調整

することが多いのですが、実務的に薬品の重さを測るのに「mol」という

単位は扱いづらいですよね。(天秤で薬品の重さを測ったりするので)

こんな理由から「mol」が使われていないのではないかと思われます。

ここからが本題になりますが、濃度を表すときに単位の末尾に

よく「as CaCO3」という表記がつくことがありますよね。

そう!これが炭酸カルシウム換算です。

以下、炭酸カルシウム換算の『なぜ?』に迫っていきます。

炭酸カルシウム換算って何?

そもそも炭酸カルシウム換算って何なんでしょうか?

炭酸カルシウムってあの、膜を目詰まりさせるスケール成分?

と思った方いますね!

そう!正解です!

あの炭酸カルシウムです。

でもちょっと待ってください。

炭酸カルシウムの濃度を計算するときに用いるのであればわかるのですが、

何で関係のない物質にまでわざわざこの単位を使うの?

しかも面倒な換算をしてまで、この単位を使うこともあります。

普通に不思議に思う人も多いかと思います。

実は炭酸カルシウム換算は昔から慣用的に用いられてきただけでなく、

ある使われ方をしていて、水処理の世界では今でも根強く残っている単位なのです。

炭酸カルシウム換算は水中の硬度の計算に使われていた

実は炭酸カルシウム換算は水中の硬度を計算するときに

古くから用いられてきた単位です。

硬度は水中に含まれるカルシウム塩やマグネシウム塩の

濃度を表示したものです。

飲料水などで硬水、軟水という時の指標として

用いられていたのがルーツとなります。

硬度成分は2価の金属イオンであるカルシウム、マグネシウムがメインですが、

これらの原子量が異なるため、mg/Lという濃度表記では、計算値も異なります。

硬水や軟水を「硬度」という一本化した指標として表記するために便宜上、

マグネシウムも炭酸カルシウムに換算したと仮定して同一の濃度で表したいと

考えるようになったんです(誰かはわかりませんが(^^;)

これが炭酸カルシウム換算が用いられるようになった背景です。

硬度以外にも炭酸カルシウム換算は「別の使われ方」があった

水処理では単に硬度の計算をするとき以外に別の用途で炭酸カルシウム換算

の考え方が使われています。

それは水中のイオン量をカチオン、アニオンでそれぞれどれくらいあるのか

計算して、比較する時等に用いられます。

よく純水装置の設計を行う時等で用いられますが、水中に含まれる

カチオンやアニオンはそれぞれが分子量が異なるため、

個別のイオン量をmg/Lで表記するよりは便宜上、炭酸カルシウム換算

で総カチオン量、総アニオン量を算出した方が総量を把握しやすい

場合があります。

特に、炭酸やシリカなどは塩としては存在しませんが、カチオン・アニオン

の総量を算出する場合にはイオンとしてカウントされるため、

炭酸カルシウム換算で便宜上、それらの量をカウントするのに用いられます。

総カチオン、総アニオン量を算出して、除去に必要なイオン量を把握する

わけですね。イオン交換樹脂装置であればイオン交換樹脂量を算出する

時に使います。





炭酸カルシウム換算の計算方法

炭酸カルシウム換算とは文字通り濃度を炭酸カルシウムに換算する計算方法ですが、

実際にはどうやって換算するのでしょうか。

答えは各イオン濃度に換算係数を掛けてあげるだけです(単純ですが・・・)

では、換算係数はどうやって導き出すのでしょうか。

これは単にそのイオンに対して炭酸カルシウムの分子量が何倍かを

計算してあげれば算出することができます。

ただし、炭酸カルシウム塩は2価のカルシウム塩なので、

1価のイオン濃度を炭酸カルシウム換算するには価数分を

割ってあげる必要があります。

(例えばナトリウムを炭酸カルシウム換算するには価数的に

カルシウム×1がナトリウム×2に相当すると考えて、

換算係数に1/2倍を考慮してあげる)

具体的にはナトリウムイオンを炭酸カルシウム換算する場合、

換算係数は以下の通り導き出します。

100(炭酸カルシウムの分子量) ÷ 23(ナトリウムの原子量) ÷ 2(価数)

=2.1739…

例えばナトリウムイオン濃度が50mg/Lの場合これを炭酸カルシウムに換算すると

50mg/L × 2.17(換算係数)=108.5mg/L as CaCO3

となります。

いちいち物質ごとに換算係数を計算するのは面倒なので、

よく水処理の教科書等では換算係数を一覧にした表が

まとめられていることもあります。

基本的な考え方は上記の通りですので、参考にしてみてください。

まとめ

水処理で用いる炭酸カルシウム換算についてまとめてしてみましたが、

なぜ炭酸カルシウム換算を用いるのか理解頂けましたでしょうか。

ルーツは硬度の計算を簡易的にするところに起因しますが、

それが他の用途でも使われるようになり、今でも使われ続けています。

別に硬度の計算で用いられなかったら、基準はわざわざ炭酸カルシウム

でなくてもよかったのかもしれませんが、炭酸カルシウムの分子量が100とキリが

よかったので、たまたま使い勝手が良くて使われ続けているのだと思います。

このように水処理の世界には不可解な慣習が残っていますが、

不思議とこの世界にいると、これが次第にしっくりとくる日がやってくるものです。

そんな不可解なものの一つが炭酸カルシウム換算です。