水処理でpH調整ほど難しいものはない?!




水処理を行う上で一番オーソドックスな処理といっても良いくらいよく登場するのはpH調整です。

でもpH調整って意外と苦労することが多かったりするんですよね。

pH調整は単にpHを上げ下げすれば良いというだけではなく、処理に合わせた至適値にしなければならないと言う点において、難しいことがあります。

今回は意外と見落とされがちな水処理の基本中の基本とも言うべきpH調整について基本的な考え方から難しいとされるポイントまで解説してみました。

そもそも水処理でpH調整って何のためにやるの?

突然ですが、水処理でそもそもpH調整って何のためにやるのか

と問われた時にどのように答えますか?

水処理ではpH調整は様々なシーンで登場しますが、目的別に大きく

整理すると以下のような分類になります。

1.水質基準を満たすため

用水や排水に対して、水質基準を満たすためにpH調整が行われます。

これは水処理の中では一番、シンプルでわかりやすいpH調整の処理操作です。

例えば、排水の放流規制として一律排水基準というものがありますが、

「海域以外の公共用水域に排出されるもの」のpHは5.8以上8.6以下と

決められています。

排水処理を行った後で、この値から逸脱している場合、最終後段で

pH調整を行なって排水を排出します。

2.水処理を正常に機能させるため

水処理で行われるpH調整では単に処理水を中和するだけでなく、

水処理プロセスそのものを正常に機能させるためにpH調整が

行われることがあります。

代表的な例としては凝集沈殿処理プロセスにおいて、凝集剤で

フロックを生成させる際に凝集剤を有効に機能させるには

至適pH領域というものがあります。

この至適pHの状態にもっていくためにpH調整が行われます。

また別の例としては、生物処理では微生物による処理が適正に行われるために、

pHを至適値に調整することもあります。

3.その他

pH調整は上記以外にも配管や機器の耐食性を上げる目的で行われたりもします。

一般的に酸性条件下では腐食が進行しやすく、それを防ぐためにアルカリ性条件に

もっていくことが行われます。

また、ある特定の物質に着目し、その物質の化学形態を変える目的でもpH調整が

行われることがあります。例えば、炭酸は酸性条件下では遊離炭酸の化学形態と

なりますが、この状態になると脱気塔で曝気することで除去しやすくなります。

このようにpH調整は用途に応じて様々な用いられ方があります。

水処理で扱う代表的なpH調整剤とは

ここでは水処理で扱う代表的なpH調整剤についてご紹介しています。

水処理では処理コストを最もリーズナブルにしつつ、pH調整の効果を

適正に得るために、pH調整剤の選定がポイントとなります。





酸剤は塩酸、硫酸が基本

pHを酸性に調整するのによく用いられるpH調整剤は塩酸と硫酸です。

いずれも工業的には安価に流通していることからよく用いられます。

塩酸は1価の酸であるのに対して、硫酸は2価の酸となるため、

pH調整剤のコスト的には硫酸の方が塩酸よりもリーズナルブです。

でも、硫酸を使う場合、硬度成分と結合して難溶解性の硫酸カルシウムなどの

物質を析出する恐れがあるため、用途に応じて使い分ける必要があります。

一般的には用水処理では塩酸が用いられ、排水処理では安価な硫酸が

用いられることが多いです。

アルカリ剤は苛性ソーダと消石灰が基本

アルカリ剤としてよく用いられるのが苛性ソーダと消石灰です。

それぞれ苛性ソーダは水酸化ナトリウム、消石灰は水酸化カルシウムの

別称で呼ばれていますが、、いずれも工業的には流通量も多いことから

とてもよく用いられます。

酸剤と同様に苛性ソーダよりも消石灰の方が安価ですが、

消石灰を用いる場合は消石灰中に含まれるカルシウム成分が

難溶解性のカルシウム塩を析出する恐れがあるため、

使用する箇所に注意が必要となります。

一般的には用水処理では苛性ソーダ、排水処理では苛性ソーダか消石灰が

用いられます。

水処理でのpH調整の難しさとは

水処理でpH調整を経験した人はpH調整は思いのほか、

難しいと感じているのではないでしょうか。

pH調整は理屈上はとてもシンプルでわかりやすいものなのですが、

実際に装置として運転制御まで行おうとするとなかなかうまく

いかないことがあります。

なぜ、pH調整がそれほどまで難しいのでしょうか。

その理由の1つ目として挙げられるのは、実際の処理対象は

緩衝作用があるため、理論上のpH調整剤を注入しても

その通りのpH値にならないことが多いからです。

なので、緩衝作用を考慮した中和曲線をあらかじめ作っておき、

pH調整剤の注入量の変動に対応できるようにしておく必要があります。

理由の2つ目としては、処理対象のpH値の変動があるケースがあるためです。

これは特に排水処理の場合に多いのですが、原水のpHが時間やタイミング

によって大きく変動することがあります。

ある時は酸で中和していたのが、ある時はアルカリが必要になるケースが

あり、それに対応させることが意外と難しいのです。

これに対してはバッファー水槽を設ける等して、pHの変動の影響を

極力受けないようにすることがポイントとなります。

さらに3つ目の理由として、pHの自動制御をする際にコントロールが

しにくいという点が挙げられます。pH計に連動させた注入ポンプで

酸・アルカリ剤の注入量を制御するようにしたとしても、

pH設定値を超えて薬品注入を行ってしまい、設定値を行ったり来たり

してしまうことがあるからです(これをオーバーシュートとい言います)。

これを防ぐためにはpH調整を2段階にする(最初は粗い中和、次に

微調整の中和を行う)ことや、制御の接点をたくさん設けるなどの

工夫が必要となります。

まとめ

pH調整は水処理でよく行われる操作の1つですが、

意外と難しい点がお分かりいただけましたでしょうか。

基本的な操作であるため、あまり深く議論されないかもしれませんが、

様々なノウハウが存在します。

たかがpH調整ですが、されどpH調整です。

pH調整を行う際は綿密な排水性状の把握と制御方法の検討を

行うようにしてください。